アとが出来た。しかし、それ以上の真相は、混沌の彼方で犯人が握っていた。その当時彼女は、窓を正面に椅子の背を扉《ドア》の方へ向けていたので、自然背後にいた人物の姿は見ることが出来なかったと云う始末だし、また、その室《へや》に入る左右の廊下には、それぞれ一人|宛《ずつ》の私服が曲り角の所で頑張っていたのだったけれども、誰しもそこを出入した人物はなかったと云うのだった。言葉を換えて云うと、その室はほとんど密閉された函室《はこむろ》に等しく、したがって、私服の眼から外れて、いやしくも形体を具えた生物なら、出入は絶対不可能であるに相違なかったのである。法水は聴取を終ると、クリヴォフ夫人の病室を出て、さっそく問題の武具室を点検した。
 その室は前面から見ると、正確に本館の真中央《まんまんなか》に当り、二条の張出間《アプス》に挾まれていて、二つある硝子窓はそれだけが他とは異なり、十八世紀末期の二段上下式になっている。また、室内も北方ゴート風の玄武岩で畳み上げた積石造《つみいしづくり》で、周囲は一抱えもある角石で築き上げられ、それが、暗く粗暴な蒙昧《もうまい》な、いかにも重々しげなテオドリック朝あたり
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