フ光景は、クリヴォフ夫人の赤毛が陽に煽《あお》られて、それがクルクル廻転するところは、さながら焔《ほのお》の独楽《こま》のようにも思えたであろうし、また、怒《いか》ったゴルゴン([#ここから割り注]メドウーサら三姉妹[#ここで割り注終わり])の頭髪を髣髴《ほうふつ》とさせるほどに、凄惨酷烈をきわめたものに違いなかった。そして、その時クリヴォフ夫人が、もし無我夢中の裡に窓框《まどわく》に片手を掛けなかったなら、あるいは、そのうちに矢筈が萎《しな》び鏃《やじり》が抜けるかして、結局直下三丈の地上で粉砕されたかもしれなかったのである。しかし、悲鳴を聴きつけられて、クリヴォフ夫人はただちに引き上げられたけれども、頭髪はほとんど無残にも引き抜かれていて、おまけに毛根からの出血で、昏倒している彼女の顔は、一面に赭丹《しゃたん》を流したよう素地を見ることが出来なかったそうであった。
その惨事が発生してから、わずか三十五分の後に、法水一行は黒死館に到着していた。館に入ると、彼はすぐにクリヴォフ夫人の病床を見舞った。すると、折よく医師の手で意識が恢復されていて、上述の事情を、杜絶《とぎ》れながらも聴く
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