黷トいることだろう。支倉君、いつぞや君は、詩文の問答をツルヴェール趣味の唱《うた》合戦と云ったことがあったっけね。ところが、どうしてそれどころか、あれは心理学者ミュンスターベルヒに、いやハーバードの実験心理学教室に対する駁論《ばくろん》なんだよ。ああいう大袈裟《おおげさ》な電気計器や記録計などを持ち出したところで、恐らく冷血性の犯罪者には、些細《ささい》の効果もあるまい。まして、生理学者ウエバーのように自企的に心動を止め、フォンタナのように虹彩を自由自在に収縮できるような人物に打衝《ぶつか》った日には、あの器械的心理試験が、いったいどうなってしまうんだろう。しかし僕は、指一本動かさせただけで、また詩文の字句一つで発掘を行い、それから、詩句で虚妄《うそ》を作らせまでして、犯人の心像を曝《あば》き出したのだ」
「なに、詩文で虚妄《うそ》を※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」と熊城がグイと唾を嚥《の》んで聴き咎《とが》めると、法水は微かに肩を聳《そび》やかせて、莨《たばこ》の灰を落した。彼の闡明《せんめい》は、もうこの惨劇が終ったのではないかと思われたほどに、十分なものだった。法水はまずその
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