ニ、結び目がしだいに下っていく。けれども、結び目に挾まっている物体が外れると、紐はピインと解《ほど》けて一本になってしまうのだ。だから犯人は、予《あらかじ》めその鍵《キイ》の使用数と最初結び付ける高さを測定しておいてから、その鍵と鐘を打つ打棒とを繋いでいる紐の上方に、鎧通しの束を結び付けておいたのだ。そうすると、演奏が進行するにつれて、鎧通しを廻転させながら、結び目がしだいに下の方へ降っていく。そして、伸子が朦朧状態で演奏している――ちょうど讃詠《アンセム》の二回目あたりで、彼女の眼前を、まるで水芸《みずげい》の紙撚《こより》水みたいに、刃《やいば》の光が閃《ひらめ》き消えながら、横になり縦になりして、鎧通しが下降していったのだ。つまり、明滅する光で垂直に瞼を撫で下す。それを眩惑操作《モノイデジーレン》と云って、催眠中の婦人に閉目させる、リエジョアの手法なんだよ。だから、瞼が閉じられると同時に、蝋質撓拗性《フレキシビリタス・ツェレア》[#ルビの「フレキシビリタス・ツェレア」は底本では「フレキシリビタス・ツェレア」]そっくりに筋識を喪った身体が、たちまち重心を失って、その場去らず塑像《そ
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