ュしている、猶太固有の犯罪風習にすぎなかった。すなわち、死体もしくは被害の個所を、周囲に蝋燭《ろうそく》を立てて照明すると、それで犯罪が、永久発覚しないという迷信が端緒だったのである。勿論その蝋燭が、火災の原因だったことは云うまでもないであろう。
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[#ボヘミア周辺地図の図(fig1317_25.png)入る]

 ああ開幕当初の場面に、法水はなんと生彩に乏しい例証を持ち出したことであろうか。けれども、続いて彼が、それに私見を加えて解答を整えると、偶然その独創の中から、さしも循環論の一隅に破られんばかりの光が差しはじめた。
「ところで、あの一文だけでは、憲兵《ゲンダルム》デーニッケの推理経路がいっこうに不明だけれども、僕はそれに解析を試みたのだ。死体を囲んだと云われる蝋燭の数は、その実五本だったのだよ。しかも、死体に十字を切らせるためには、それで死体を囲まずに、削ぎ竹のように片側の蝋を削いだ丈の短い四本を周囲《まわり》に並べて、その中央に、全長の半ばほどの蝋を取り除いて長い芯だけにした一本を置き、それを囲ませなければならなかった。何故なら、風鶏計《かざみ》の四本
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