l察はついに徒労ではなかったのだ。散々《さんざん》ぱら悩まされた五芒星呪文の正体が、ものもあろうに、ルイ十三世朝|機密閣《ブラック・キャビネット》史の中から発見されたのだよ。いや言葉を換えて云おう。当時不即不離の態度だったけれども、新教徒の保護者グスタフス・アドルフス(瑞典《スウェーデン》王)と対峙していたのが、有名な僧正宰相リシュリュウだったのだ。実にこの事件の本体が、あの陰険きわまりない暗躍の中に尽されているのだよ。ところで支倉君、君は、リシュリュウ機密閣《ブラック・キャビネット》の内容を知っているかね。暗号解読家のフランソア・ヴィエトやロッシニョールは? 錬金魔法師兼暗殺者のオッチリーユは? つまり、問題はこの悪党僧正《ブラック・モンク》オッチリーユにあるのだが……ああ、なんという薄気味悪い一致だろうか。被害者の名も[#「被害者の名も」に傍点]、犯人の名も[#「犯人の名も」に傍点]、あの竜騎兵王を斃したリュッツェン役の戦歿者中に現われているのだがね[#「あの竜騎兵王を斃したリュッツェン役の戦歿者中に現われているのだがね」に傍点]」

[#ここから4字下げ]
(註)一六三一年瑞典王
前へ 次へ
全700ページ中347ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング