「よ。外側に向いている角が[#「外側に向いている角が」に傍点]、見るとおりに少し開いている[#「見るとおりに少し開いている」に傍点]」
「ああなるほど、毛髪《かみのけ》と鍵の角度に水! これは、博学なる先生に御挨拶申し上げます。すこぶる汗をかかされたものですわい」
と同じく洒落《しゃれ》た口調で、検事もメフィストの科白《せりふ》で相槌《あいづち》を打ったけれども、それには、犯人と法水と、両様の意味で圧倒されてしまった。……あの夜ダンネベルグ夫人が死体となった室《へや》の扉《ドア》には、鍵孔に注ぎ込んだ水の湿度によって毛髪が伸縮し、自働的に開閉されるデイ博士の隠顕扉装置が秘められてあった。ところが、それに必要な水と毛髪とが、カルデア古呪文の中に隠されていたのは未だしもの事で、より以上の驚きと云うのは、ほかにあったのだ。それは、その装置を力学的に奏効させるところの落し金の角度が、物もあろうに機械図のような精密さで、五芒星の封鎖を破ったメフィストの科白《せりふ》の中に示されていた事である。そうなると、勿論その方程式は、事件中最大の疑問と云われる次の風精《ジルフス》に向って追及されねばならな
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