ノ、御夫君の押鐘博士から電話が掛ってまいりました。そして、昨夜九時の急行で、九大の神経学会に行くとかいう旨を伝えられたそうですが、その時召使の一人が、津多子様が電話室からお出になったのを見たのみで、それなり、吾々《われわれ》の眼には触れなくなってしまわれたのです。もっともこの電話のことは、御自宅を確かめた時に、先方の口から出た事実でしたが」
「なるほど、六時から八時――。とにかくその間の動静を、各個人《それぞれ》に調べることだ。あるいはそこから、火繩銃ぐらいは飛び出さんとも限らんからね」と熊城がほとんど直観的に云うと、それを法水は、驚いたように見返して、
「冗談じゃない。なるほど、君は体力的だよ。しかし、あの狂人詩人のすることに、どうして不在証明《アリバイ》なんて、そんな陳腐な軌道があってたまるもんか」と、てんで頭から相手にしなかった。それから彼は、片眼鏡《モノクル》でも欲しそうな鑑賞的な態度になって、物奇《ものめずら》しそうな視線を立ち並ぶ古代時計に馳《は》せはじめた。
それには、カルデアのロッサス日時計やビスマーク島ダクダク講社の棕櫚絲《しゅろいと》時計。水時計の類には、まず、ト
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