換えの跡が残っているのです。そればかりでなく、その置き換えの行われたのが、昨夜の七時以後であることも、召使の証言によって確かめることが出来ました。しかし、その置き換えには、すこぶる繊細《デリケート》な心像が映っているのですよ。そして、それが円廊の対岸にある二つの壁画と俟《ま》って、始めてこの本体を明らかにするのでした。御承知のとおり、右手のものは『処女受胎の図』で、聖母《マリア》が左端に立ち、左手の『カルバリ山の朝』は、右端に耶蘇《イエス》を釘付けにした十字架が立っているのです。つまりその二つの兜を置き換えないでは、聖母《マリア》が十字架に釘付けされるという、世にも不可思議な現象が現われるからでした。しかし、その原因は容易《たやす》く突き究めることが出来たのです。ねえ田郷さん、円廊の扉際には、外面|艶消《つやけ》しの硝子で平面の弁と凸面の弁を交互にして作った、六弁形の壁灯がありましたっけね。実は、緋縅錣《ひおどししころ》の方に向いている平面の弁に、一つの気泡があるのを発見したのです。ところで、眼科に使うコクチウス検眼鏡の装置を御存じでしょうか。平面反射鏡の中央に微孔を穿《うが》って、そ
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