いる声で、反抗気味に問い返した。
「つまり、貴方がたに課せられている、算哲博士の意志をですがね」
「ああ、それでしたら」と旗太郎は、微かに自嘲めいた亢奮《こうふん》を泛《うか》べて、「確かに、音楽教育をしてくれた事だけは、感謝してますがね。でなかった日には、既《とう》に気狂いになっていますよ。そうでしょう。倦怠《けんたい》、不安、懐疑、廃頽《はいたい》――と明け暮れそればかりです。誰だって、こんな圧し殺《つぶ》されそうな憂鬱の中で、古びた能衣裳みたいな人達といっしょに暮してゆけるもんですか。実際父は、僕に人間惨苦の記録を残させる――それだけのために、細々と生を保ってゆく術《すべ》を教えてくれたのです」
「そうすると、それ以外のすべてを、四人の帰化入籍が奪ってしまったという訳ですか?」
「たぶんそうともなりましょうね」と旗太郎は妙に臆したような云い方をして、「いや、事実未だに、その理由が判然《はっきり》としておりません。なにしろ、グレーテさんはじめ四人の人達の意志が、それには少しも加わっていないのですからね。ところで、こういう女王《クイーン》アン時代の警句を御存じですか。陪審人が僧正《ビ
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