り」真斎は平然としながらも、妙に硬苦《かたくる》しい態度で答えた。「隠扉《かくしど》もなければ、揚蓋《あげぶた》も秘密階段もありません。ですから、確実に、|再び開く事なし《ナット・ロング・ディヴィジブル》――なのです」
「ワッハハハハ、いやかえって、|異常に空想が働き、男自ら妊れるものと信ずるならん《メン・プルーヴ・ウイズ・チャイルド・アズ・パワーフル・ファンシイ・ウォークス》――かもしれませんよ」と法水が爆笑を揚げたので、それまで、陰性のものがあるように思われて、妙に緊迫していた空気が、偶然そこで解《ほぐ》れてしまった。真斎もホッとした顔になって、
「それより法水さん、この方を儂《わし》は、|処女は壺になったと思い三たび声を上げて栓を探す《エンド・メイド・ターンド・ボットルス・コール・アラウド・フォア・コークス・スライス》――だと思うのですが」
 この奇様な詩文の応答に、側の二人は唖然《あぜん》となっていたが、熊城は苦々しく法水に流眄《ながしめ》をくれて、事務的な質問を挾んだ。
「ところで、お訊ねしたいのは、遺産相続の実状なんです」
「それが、不幸にして明らかではないのですよ」真斎は
前へ 次へ
全700ページ中243ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング