穴かんむり/石」、174−17]では、眼に見えない符号呪術の火が焚《た》かれていて、黒死館の櫓楼の上を彷徨《ほうこう》する、黒い陰風がある――と結論しなければならないだろう。しかし、とうてい僕には、それを一片の心霊分析としか解釈できない。そして、ディグスビイという神秘的な性格を持つ男が、生前抱いていた意志である――という推断だけに止めておきたいのだ。何故なら熊城君、すでに僕は危険を悟って、心理学の著述などは、ロッジの『レイモンド』ボルマンの『蘇格蘭人《デル・スコッテ》ホーム』の改訂版以後は読まないのだし、また、『妖異評論《オカルト・レヴュー》』の全冊を焼き捨ててしまったほどだからね」
 最後に至って、法水は鉄のような唯物主義者の本領を発揮した。けれども、彼の張りきった絃線のような神経に触れるものは、たちどころに、その場去らず類推の花弁となって開いてしまうのだ。わずか一つの弱音器記号からでも、当の館の人々にさえ顔相《かおかたち》すら知られていない、故人クロード・ディグスビイの驚くべき心理を曝《さら》け出したのであった。それから、法水等は墓地を出て、風雪の中を本館の方に歩んで行ったが、こう
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