スビイという男はたいしたものじゃない。たぶん彼奴《あいつ》は魑魅魍魎《ポルターガイスト》だろうぜ」
「どうして、やつは大魔霊《デモーネン・ガイスト》さ」と法水は意外な言《ことば》を吐いた。「あの弱音器記号には、中世迷信の形相|凄《すさま》じい力が籠《こも》っているのだよ」
楽譜の知識のない二人には、法水が闡明《せんめい》するのを待つよりほかになかった。法水は一息深く煙を吸い込んで云った。
「勿論、Con《コン》 Sordino《ソルディノ》 では意味をなさないのだが、それには、一つだけ例外があるのだ。と云うのは、僕が先刻《さっき》鎮子を面喰《めんくら》わせた、『パルシファル』なんだよ。ワグネルはあの楽劇の中で、フレンチ・ホルンの弱音器記号に|+《よこじゅうじ》という符号を使っている。ところが、それは傍ら棺龕《カタファルコ》十字架の表象《シムボル》でもあり、また数論占星学では、三惑星の星座連結を表わしているのだ」と法水は、指で掌《てのひら》に描いたその記号の三隅に、ちょうど+となるような位置で、点を三つ打った。
「そうすると、いったいその棺龕《カタファルコ》と云うのは、どこにあるのだね
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