さ、最初から、給金《しんしょう》も出ないくせに嗤《わら》われどおしじゃないか」
「どうして、あんな淫魔《インキブス》僧正どころの話じゃない」と検事は熊城を嗜《たしな》めるような軽い警句を吐いたが、かえって、それが慄然《ぞっ》とするような結論を引き出してしまった。「事実まったく、クォーダー侯のマクベス様([#ここから割り注]四人の妖婆の科白[#ここで割り注終わり])――とでも云いたいところなんだよ。どうして彼奴《あいつ》が死霊でもなければ、法水君が見当をつけたものを、それ以前に隠すことなんて出来るものじゃない」
「うん、まさに小気味よい敗北さ。実は、僕も忸怩《じくじ》となっているところなんだよ」法水は何故か伏目になって、神経的な云い方をした。「先刻《さっき》僕は、鍵の紛失した薬物室に犯人を秤《はか》るものがあると云った。また、易介の死因に現われた疑問を解こうとして、レッサーの著書に気がついたのだ。ところが、その結果、理智の秤量《しょうりょう》が反対になってしまって、かえってこっちの方が、犯人の設《しつら》えた秤皿《さら》の上に載せられてしまったのだよ。しかし、こうやって嗤《わら》いの面を
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