ュケル》風の書室造りだったのである。その空《がら》んとした図書室を横切って、突当りの明りが差している扉を開くと、そこは、好事家《こうずか》に垂涎《すいぜん》の思いをさせている、降矢木の書庫になっていた。二十層あまりに区切られている、書架の奥に事務机があって、そこには、久我鎮子の皮肉な舌が待ち構えていた。
「オヤ、この室にお出でになるようじゃ、たいした事もなかったと見えますね」
「事実そのとおりなんです。あれ以後人形が出ない代りに、死霊《おばけ》は連続的に出没していますよ」と法水は先を打たれて、苦笑した。
「そうでしょう。先刻《さっき》はまた妙な倍音が聴えましたわ。でも、まさか伸子さんを犯人になさりゃしないでしょうね」
「ああ、あの倍音を御存じでしたか」と法水は瞼を微かに戦《おのの》かせたが、かえって探るような眼差で相手を見て、
「しかし、この事件全体の構成だけは判りましたよ。それが、貴女《あなた》の云われたミンコフスキーの四次元世界なんです」といっこう動じた色も見せず、続いて本題を切り出した。
「ところで、その過去圏を調べにまいったのですが、たしか、鎮魂楽《レキエム》の原譜はあるでしょ
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