すでに第二の事件を敢行しているのだ。
[#殺人現場の図(fig1317_07.png)入る]
 法水は、すぐ円廊の扉を開いて光線を入れてから、左側に立ち並んでいる吊具足の列を見渡しはじめた。が、すぐに「これだ」と云って、中央の一つを指差した。その一つは、萌黄匂《もえぎにおい》の鎧《よろい》で、それに鍬形《くわがた》五枚立の兜《かぶと》を載せたほか、毘沙門篠《びしゃもんしの》の両|籠罩《こて》、小袴《こばかま》、脛当《すねあて》、鞠沓《まりぐつ》までもつけた本格の武者装束。面部から咽喉にかけての所は、咽輪《のどわ》と黒漆《くろぬり》の猛悪な相をした面当《めんぼう》で隠されてあった。そして、背には、軍配|日月《じつげつ》の中央に南無日輪摩利支天《なむにちりんまりしてん》と認《したた》めた母衣《ほろ》を負い、その脇に竜虎の旗差物《はたさしもの》が挾んであった。しかし、その一列のうちに注目すべき現象が現われていたと云うのは、その萌黄匂を中心にして、左右の全部が等しく斜めに向いているばかりでなく、その横向きになった方向が、交互《かわるがわる》一つ置きに一致していて、つまり、右、左、右という風に、
前へ 次へ
全700ページ中149ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング