っき》人形の室で、犯人が何故絲と人形の技巧《トリック》を遺して置いたのか判るだろう。外側からの技巧《トリック》ばかりを詮索していた日には、この事件は永遠に、扉一つが鎖してしまうのだ。それに、そろそろこの辺から、ウイチグス呪法の雰囲気が濃くなってゆくような気がするじゃないか」
「すると、人形はその時の溢《こぼ》れた水を踏んだという事になるね」と検事は、引きつれたような声を出した。「もう後は、あの鈴のような音《おと》だけなんだ。これで犯人を伴った人形の存在は[#「犯人を伴った人形の存在は」に傍点]、いよいよ確定されたとみて差支えない。しかし、君の神経が閃《ひらめ》くたびごとに、その結果が、君の意向とは反対の形で現われてしまう。それは、いったいどうしたってことなんだい」
「ウム、僕にもどうも解《げ》せないんだ。まるで、穽《わな》の中を歩いているような気がするよ」と法水にも錯乱した様子が見えると、
「僕はその点が両方に通じてやしないかと思うよ。いまの真斎の混乱はどうだ。あれはけっして看過しちゃならん」とこれぞとばかりに、熊城が云った。
「ところがねえ」と法水は苦笑して、「実は、僕の恫※[#「り
前へ 次へ
全700ページ中135ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング