うど博士の心臓の辺に当りはしませんか。それが、楕円形をしているのですから、護符刀の束頭《つかがしら》であることは一目瞭然たるものです。そうなると、当然天寿を楽しむよりほかに自殺の動機など何一つなく、おまけにその日は、愛人の人形を抱いて若かった日の憶い出に耽《ふけ》ろうとしたほどの博士が、何故|扉際《とぎわ》に押し付けられて、心臓を貫いていたのでしょう」
 真斎は声を発することはおろか、依然たる症状を続けて、気力がまさに尽きなんとしていた。蝋白色に変った顔面からは膏《あぶら》のような汗が滴り落ち、とうてい正視に耐えぬ惨めさだった。ところが、それにもかかわらず法水は、この残忍な追求をいっかな止めようとはしなかった。
「ところで、ここに奇妙な逆説《パラドックス》があるのです。その殺人が、かえって五体の完全な人間には不可能なんですよ。何故なら、ほとんど音の立たない、手働四輪車の機械力が必要だったからで、それがまず、敷物《カーペット》に波を作って縮め重ねてゆき、終いには、博士を扉に激突させたからでした。何分にも、当時|室《へや》は闇に近い薄明りで、右側の帷幕《とばり》の蔭に貴方が隠れていたのも知
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