化していて、降矢木《ふりやぎ》の籍に、算哲の養子養女となって入籍しているんだ。それにまだ遺産相続の手続がされていない。つまり、この館は未だもって、正統の継承者旗太郎の手中には落ちていないのだよ」
「こりゃ驚いた」検事はペンを抛り出して唖然となってしまったが、すぐに指を繰ってみて、「たぶん手続が遅れているのは、算哲の遺言書でもあるからだろうが、剰《あま》すところもう、法定期限は二ヶ月しかない。それが切れると、遺産は国庫の中に落ちてしまうんだ」
「そうなんだ。だから、そこにもし殺人動機があるものとすれば、ファウスト博士の隠れ蓑《みの》――あの五芒星《ペンタグラムマ》の円が判るよ。しかし、どのみち一つの角度《アングル》には相違ないけれども、なにしろ四人の帰化入籍というような、思いもつかぬものがあるほどだからね。その深さは並大抵のものじゃあるまい。いや、かえって僕は、それを迂闊《うかつ》に首肯してはならないものを握っているんだ」
「いったい何を?」
「先刻《さっき》君が質問した中の、(一)・(二)・(五)の箇条なんだよ。甲冑《かっちゅう》武者が階段廊の上へ飛び上っていて――、召使《バトラー》は
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