ている。しかし、あれはけっして、作者の窮策じゃない。ヴァン・ダインは、いかに因数《ファクター》を決定することが、切実な問題であるかを教えているんだ。だからさ。何より差し当っての急務というのが、それだ。因数《ファクター》だ――さしずめその幾つかを、このモヤモヤした疑問の中から摘出するにあるんだよ」
 それから検事が覚書を作っている間に、法水は十五分ばかり室《へや》を出ていたが、間もなく、一人の私服と前後して戻って来た。その刑事は、館内の隅々までも捜索したにかかわらず、易介の発見がついに徒労に帰したという旨を報告した。法水は眉のあたりをビリビリ動かしながら、
「では、古代時計室と拱廊《そでろうか》を調べたかね」
「ところが、彼処《あすこ》は」と私服は頸《くび》を振って、「昨夜の八時に、執事が鍵を下したままなんですから。しかし、その鍵は紛失しておりません。それから拱廊《そでろうか》では、円廊の方の扉が、左側一枚開いているだけのことでした」
「フムそうか」といったん法水は頷《うなず》いたが、「ではもう打ち切ってもらおう。けっしてこの建物から外へは出てやしないのだから」と異様に矛盾した、二様の観
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