暗受しているような、陰鬱な影を漂わせていた。が、鎮子には、慇懃《いんぎん》な口調で云った。
「とにかく、種々《いろいろ》と材料をそろえて頂いたことは感謝しますが、しかし結論となると、はなはだ遺憾千万です。貴女の見事な類推論法でも、結局私には、いわゆる、如き観を呈するもの[#「如き観を呈するもの」に傍点]としか見られんのですからね。ですからたとい人形が眼前に現われて来たにしたところで、私は、それを幻覚としか見ないでしょう。第一そういう、非生物学的な、力の所在というのが判らないのです」
「それは段々とお判りになりますわ」と鎮子は最後の駄目を押すような語気で云った。「実は、算哲様の日課書の中に――それが自殺なされた前月昨年の三月十日の欄でしたが――そこにこういう記述があるのです。|吾[#「吾」は太字]《われ》、隠されねばならぬ隠密の力を求めてそれを得たれば、この日魔法書を[#「、隠されねばならぬ隠密の力を求めてそれを得たれば、この日魔法書を」は太字]|焚[#「焚」は太字]《た》けり[#「けり」は太字]――と。と申して、すでに無機物と化したあの方の遺骸には、一顧の価値《あたい》もございませんけ
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