g様の事件は終ったらしいね。けっして喝采《かっさい》をうけるほどの終局じゃないけれども、まさかこの洪牙利《ハンガリー》の騎士が、犯人とは思いも寄らなかったよ」それ以前すでに、棺台の上が調査されていた。そして、そこに残されている靴跡から判断すると、その端に立ったレヴェズが両手を革紐にかけ、足を離しながら、首を紐の上に落したことは疑うべくもなかった。その――てっきり海獣を思わせるような屍体は、同じく宮廷楽師《カペルマイスター》の衣裳を附けていて、胸のあたりがわずかに吐瀉物で汚されている。なお、推定時刻は一時間前後で、ほぼクリヴォフの殺害と符合していたが、革紐は襟布《カラー》の上からそのなりに印されていて、それが頸筋《くびすじ》に、無残なほど深く喰い入っていた。勿論あらゆる点にわたって、縊死《いし》の形跡は歴然たるものだった。のみならず、それを一面にも立証しているのが、レヴェズの顔面表情だった。その黝《くろ》ずんだ紫色に変った顔には、眉の内端がへの字なりに吊り上り、下眼瞼《したまぶた》は重そうに垂れていて、口も両端が引き下っている。勿論それ等の特徴は、いわゆる|落ちる《フォール》と呼ぶものであって、それにはとうてい打ち消しようもない、絶望と苦悩の色が漂っているのであった。しかしその間、検事は、頸筋の襟布《カラー》を指で摘み上げて、しきりと後頭部の生え際のあたりを瞶《みつ》めていた。が、そうしているうちに、その眼が不気味に据えられてきた。
「僕は、レヴェズに対するゴシップが、あまり酷評に過ぎやせんかと思うのだ。どうだろう法水君、この胡桃形《くるみがた》をした無残な烙印《やきいん》には、たしか索溝の形状《かたち》と、背馳《はいち》するものがあるように思われるんだが」とてっきり、胡桃《くるみ》の殻としか思われない結節の痕《あと》が、一つ生え際に止められているのを指し示して、
「なるほど、索状が上向きにつけられている。そうしたら、こんな結節の一つ二つなんぞは、恐らく瑣事にもすぎんだろう。しかし、古臭いフォン・ホフマンの『法医学教科書』の中にも、こういう例が一つあるじゃないか。それは――床に落ちた書類を拾おうとして、被害者が身体を踞《かが》めたところを、その一眼鏡《モノクル》の絹紐で、犯人が後様《うしろざま》に絞め上げたと云うのだ。勿論そうすれば、索溝が斜め上方につけられるので、後
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