B彼等三人には、すでにレヴェズを檻《おり》の中に発見したような心持がして、その残忍な反応を思う存分|貪《むさぼ》り喰いたいのだった。ところが、恐らく内部から鎖されていて、武具室にある、破城槌《バッテリング・ラム》の力でも借りなければ――と信じられていたその扉《ドア》が、意外にも、熊城の掌《てのひら》を載せたまま、すうっと後退《あとずさ》りしたのだった。内部《なか》は、湿っぽい密閉された室《へや》特有の闇で、そこからは、濁りきっていて妙に埃っぽい、咽喉《のど》を擽《くすぐ》るような空気が流れ出てくるのだ。そして、懐中電燈の円い光の中には、はたせるかな、数条の新しい靴跡が現われ出たのだった。その瞬間、闇の彼方にレヴェズの烱々《けいけい》たる眼光が現われ、彼が喘《あえ》ぎ凝《こ》らす、野獣のような息吹が聴えてきた――と思われたのは、彼等の彩塵が描き出した幻だったのだ。その足跡は、奥の垂幕の蔭に消え、最奥の棺室《ひつぎしつ》に続いているのである。ところが、その折彼等が、思わず固唾《かたず》を嚥《の》んだと云うのは、垂幕の裾から床の隅々にまで、送った光の中には、わずか棺台《ひつぎだい》の脚が四本現われたのみで、そこには人影がないのだった。|紋章のない石《クレストレッス・ストーン》――すでにレヴェズは、この室《へや》から姿を消してしまったのであろう。と、熊城が勢いよく垂幕を剥いだ時に、突然彼は、何者かに額を蹴られて床に倒れた。それと同時に、垂幕の鉄棒が軋《きし》む響が頭上に起って、検事の胸を目掛けて飛んだ固い物体があった。彼は思わずそれを握りしめた――靴。しかしその瞬間、法水の眼は頭上の一点に凍りついてしまった。見よ、そこには一本の裸足と、靴の脱げかかったもう一本――それが、鈍い大振子のように揺れているのだった。
さながら、脳漿《のうしょう》の臭いを嗅《か》ぐ思いのする法水の推定が、ついに覆《くつがえ》されてしまった。レヴェズは発見されはしたものの、垂幕の鉄棒に革紐を吊って、縊死《いし》を遂げているのだった。閉幕――恐らく黒死館殺人事件は、このあっけない一幕を最後に終ったのであろう。しかし、この結論が、けっして法水を満足させるものでないにもせよ、それは不思議なくらいに、彼を狼狽《ろうばい》させた。熊城は、私服に下させた屍体の顔に、灯を向けて云った。
「やれやれ、これでファウス
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