bクを守護神にして、僕はドルイド呪僧と闘わねばならなくなったのです。貴方は、あの愛蘭土《アイルランド》の傑僧がデシル法――(註)に似た行列を行うと、それがドルイド呪僧を駆逐《くちく》して、アルマーの地が聖化されたという史実を御存じでしょうか」
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(註)ウエールスの悪魔教ドルイドの宗儀で、祭壇の周囲を太陽の運行と同様に、すなわち、左から右に廻る習俗。
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「デシル法※[#感嘆符疑問符、1−8−78] それを、どうしてまた貴方が……」と臆したように面《おもて》を曇らせたが、セレナ夫人は、そうした口の下から問い返した。「ですけど、聰明な聖パトリックは、布教の方便として、あの左から右へ廻る行列法を借りたのではございませんこと」
「さよう、それが今日の事件では、|もの云う表象《テル・テール・シムボル》――だったのです。しかし、呪術の表象《シムボル》を他に移すということは、呪僧それ自らを滅ぼすことなんですよ」と法水は、意地悪げな片笑を泛《うか》べて、陰性な威嚇《いかく》を罩《こ》めたような言葉を云い切った。ああ、|もの云う表象《テル・テール・シムボル》。――とは何であろうか。その解《ほぐ》れきれない霧のようなものは、妙に筋肉が硬ばり、血が凍りつくような空気を作ってしまった。ところが、そのうちセレナ夫人の眼が異様に瞬《またた》かれたかと思うと、最初法水を見、それから、伸子に憎々しげな一瞥《いちべつ》をくれたが、すぐにその視線は、壇下の一点に落ちて動かなくなってしまった。そこには、云いようのない不吉な署名があった。法水が、右から左へという|もの云う表象《テル・テール・シムボル》――ちょうどそれに当るものが、クリヴォフ夫人の背に現われていたのだ。その指差している手の形をした血の溜りが、あろうことか指頭の方向を、右方の壇上――すなわち伸子の位置に向けていたからである。のみならず、あるいは気のせいかは知らないけれども、なんとなくその形が、竪琴《ハープ》にも似ているように思われるのだった。一同は云いしれぬ恐ろしい力を感じて、しばらくその符号に釘づけされてしまった。やがて、伸子は竪琴《ハープ》に顔を隠して、肩を顫《ふる》わせ激しい息使いを始めたが、法水は、それなり訊問を打ち切ってしまった。三人が出て行ってしまうと、熊城は熱のあるような眼を法水に
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