黷ナ、最初はこの靴跡なんだが……」と卓上に載せてある二つの石膏型を取り上げた。「勿論これに、くどくどしい説明は要るまいけれど、まず最初が、小さい方の純護謨製《ピュアラバー》の園芸靴――だ。これは、元来易介の常用品で、園芸倉庫から発して、乾板の破片との間を往復している。ところが、その歩行線を見ると、形状《かたち》の大きさに比べると、非常に歩幅が狭く、しかも全体が、電光形《ジグザグ》に運ばれているのだ。また、その上足型自身にも、僕等の想像を超絶しているような、疑問が含まれている。だって考えて見給え、易介みたいな侏儒《こびと》の足に合うような靴で、その横幅が、一々異なっているじゃないか。その上、爪先の印像を中央の部分に比較すると、均衡上幾分小さいように思われるのだ。おまけに、後踵《こうしょう》部に重点があったと言えて、その部分には、特に力を加えたらしい跡が残されている……。それから、もう一つの套靴《オヴァ・シューズ》の方は、本館の右端にある出入|扉《ドア》から始まっていて、中央の張出間《アプス》を弓形に添い、やはりそれも、乾板の破片との間を往復しているのだ。しかしその方は、やや靴の形状に比較して小刻みだと云うのみで、歩線も至って整然としている。そして、疑問と云うのは、かえって靴型の方にあったのだ。つまり、爪先と踵と両端がグッと窪んでいて、しかも、内側に偏曲した内翻の形を示している。またさらに、それが中央へ行くに従い、浅くなっているのだ。勿論、乾板の破片を挾んでいるのだから、その二条の靴跡が何を目的としたか――それはすでに、明らかだと云って差支えないだろう。しかも、それが時間的にも、あの夜雨が降り止んだ、十一時半以後であることが証明されているし、また、一個所|套靴《オヴァ・シューズ》の方が園芸靴を踏んでいて、二人がその場所に辿《たど》りついた前後も、明らかにされているのだ。ところが、仮令《たとえ》これだけの疑題《クエスチョネーア》を提供されても、その結論に至って、僕等は些《いささ》かもまごつくところはないのだよ。実際家の熊城君なんぞは既《とう》に気がついているだろうが、その二つの足型を採証的に解釈してみると、大男のレヴェズが履く套靴《オヴァ・シューズ》の方には、さらにより以上|魁偉《かいい》な巨人が想像され、また、侏儒《こびと》の園芸靴を履いた主は、むしろ易介以下の、リリパ
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