ゥ殺を決意する場面に現われているからなんだ」と法水はこころもち臆したような顔色になったが、その口の下から、眉を上げ毅然《きぜん》と云い放ったものがあった。
「けれども支倉君、あの対決の中には、犯人にとってとうてい避け難い危機が含まれているんだ。事実僕が引っ組んだのは、レヴェズじゃないのだ。やはりファウスト博士だったのだよ。実を云うと、僕はまだ事件に現われて来ない、五芒星呪文の最後の一つ――地精《コボルト》の札の所在《ありか》を知っているのだがね」
「なに、地精《コボルト》の紙片※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」検事も熊城も、仰天せんばかりに驚いてしまった。しかし、法水の眉宇間には、賭博《とばく》とするには、あまりに断定的なものが現われていた。彼の凄愴《せいそう》な神経作用《ナーヴァシズム》が、いかなる詭計によって、あの幽鬼の牙城に酷迫したのであろうか。そのにわかに緊張した空気の中で、法水は冷たくなった紅茶を啜《すす》り終ると語りはじめたが、それは、驚くべき心理分析だったのだ。
「ところで、僕はゴールトンの仮説《セオリー》を剽竊《ひょうせつ》して、それで、レヴェズの心像を分析してみたのだ。と云うのは、あの心理学者の名著――『|人間能力の考察《インクワイアリー・イントゥ・ヒューマン・ファカルティ》』の中に現われていることだが、想像力の優れた人物になると、語《ことば》や数字に共感現象が起って、それに関聯した図式を、具体的な明瞭な形で頭の中へ泛《うか》べる場合があるのだ。例えば数字を云う場合に、時計の盤面が現われることなど一例だが……いまレヴェズの談話の中に、それにもました、強烈な表現が現われたのだ。支倉君、あの男は伸子に愛を求めた結果について、こういうことを悲しげにいったのだよ。――天空の虹は抛物線《パラボリック》、露滴の虹は双曲線《ハイパーボリック》、しかしそれが楕円形《イリプティック》でない限り、伸子は自分の懐《ふところ》に飛び込んでは来ない――と。ところが、その間レヴェズの眼に、微かな運動が起って、彼が幾何学的な用語を口にするたびごと、なんとなく宙に図式を描いているような、動きが認められるのだった。そこで僕は、その黙劇めいた心理表出に、一つの息詰まるような徴候を発見したのだよ。何故なら拠物線《パラボリック》※[#「))」の上下を付けた形(fig1317_45.pn
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