Eォバイ・カイン・リード・メール・フレーテット》――つまり、レナウの『|秋の心《ヘルプストゲフュール》』の一節なんですから」と法水は、静かな洗煉された調子で、彼の実証法を述べるのだった。
「ところで、今となれば御気づきでしょうが、僕は事件の関係者を映す心像鏡として、実は詩を用いました。そして、数多《おおく》の象徴を打《ぶ》ち撒《ま》けておいたのです。つまり、それに合した符号なり照応なりを、徴候的に解釈して、それで心の奥底を知ろうとしました。さて、あのレナウの詩ですが、それを用いて、僕が一種の読心術に成功したのです。と云うのは、心理学上の術語で聯想分析と云って、それを、ライヘルト等の新派法心理者達は、予審判事の訊問中にも用いよ――と勧告しているのです。何故なら、ここに次のような、ミュンスターベルヒの心理実験があるからで……。最初|喧騒《テューマルト》(Tumult)と書いた紙を被験者に示して、その直後、鉄路(Railroad《レイルロード》)と耳元で囁《ささや》くと、その紙片の文字のことを、被験者は隧道《タンネル》と答えたと云うのですよ。つまり、吾々《われわれ》の聯想中に、他から有機的な力が働くと、そこに一種の錯覚が起らねばならないからです。けれども僕は、それに独自の解釈を加えて、その公式――つまり、Tumult《テューマルト》 |+《プラス》 Railroad《レイルロード》 |=《イコール》 Tunnel《タンネル》 を逆に応用して、まず1を相手の心像とし、その未知数を2と3とで描破しようと企てたのでした。そこでまず、|そこにあるは薔薇なり《ドッホ・ローゼン・ジンテス》――と云った後で、貴方の述べる一句一句を検討してみました。すると、貴方は僕の顔色を窺《うかが》うような態度になって、では薔薇乳香《ローゼン・ヴァイラウフ》を焚《た》いたのでは――と云われましたね。僕はそこで、ズキンと神経に衝《つ》き上げてくるものを感じたのです。何故なら、公教《カトリック》でも猶太《ユダヤ》教でも、乳香にはボスウェリア種とテュリフェラの二種しかないからで、勿論混種の香料は宗儀上許されていないからです。つまり、薔薇乳香《ローゼン・ヴァイラウフ》という一言は、貴方の心中、奥深くに潜んでいるものがあって、その有機的な影響に、違いないと結論するに至りました。明らかにその一語は、何か一つの真実
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