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そして、次の一文が続いていた。それは文意と云い、創世記に皮肉嘲説を浴びせているようなものだった。

 ――(訳文)。エホバ神《がみ》は半陰陽《ふたなり》なりき。初めに自らいとなみて、双生児《ふたご》を生み給えり。最初に胎《はら》より出でしは、女にしてエヴと名付け、次なるは男にしてアダムと名付けたり。しかるに、アダムは陽に向う時、臍《ほぞ》より上は陽に従いて背後に影をなせども、臍《ほぞ》より下は陽に逆《さから》いて、前方に影を落せり。神、この不思議を見ていたく驚き、アダムを畏《おそ》れて自らが子となし給いしも、エヴは常の人と異ならざれば婢《しもめ》となし、さてエヴといとなみしに、エヴ妊《みごも》りて女児《おなご》を生みて死せり。神、その女児《おなご》を下界に降《くだ》して人の母となさしめ給いき。
[#ここで字下げ終わり]

 法水は、それにちょっと眼を通しただけだったが、検事と熊城はいつまでも捻《ひね》くっていて、しばらく数分のあいだ瞶《みつ》めていた。しかし、ついにつまらなそうな手付で卓上に投げ出したけれども、さすが文中に籠《こも》っているディグスビイの呪詛《じゅそ》の意志には、磅※[#「石+(蒲/寸)」、第3水準1−89−18]《ほうはく》と迫ってくるものがあったのは事実だった。
「なるほど、明白にディグスビイの告白だが、これほど怖ろしい毒念があるだろうか」検事は思いなし声を慄《ふる》わせて、法水を見た。「たしかに文中にある尻軽娘と云うのは、テレーズのことを指して云うのだろう。すると、テレーズ・算哲・ディグスビイ――とこの三角恋愛関係の帰結は、当然、カインの輩の中に鎖じ込められ[#「カインの輩の中に鎖じ込められ」に傍点]――の一句で瞭然たるものになってしまう。そして、ディグスビイはまず、この館に難問を提出し、そうしてから、その錯綜《ジグザグ》の結び目の中で、嘲笑《せせらわら》っているのだ」と検事は神経的に指を絡み合わせて、天井をふり仰いだ。「ああ、その次は、凶鐘にて人形を喚び覚せ[#「凶鐘にて人形を喚び覚せ」に傍点]――じゃないか。ねえ法水君、ディグスビイという不可解な男は、この館の東洋人どもが、ゴロゴロ地獄へ転がり込んで行く光景さえ予知していたのだよ。つまり、この事件の生因は、遠く四十年前にあったのだ。すでにあの男は、その時事件の役割を端役までも定めてい
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