モる》え鳴ったのだろう――。最初は、重い人形が隣室の壁際を歩んだ。そして、次は今の熊城君だ。つまり、|大階段の裏《ビハインド・ステイアス》――の解答と云うのは、この隣室との境にある壁のことなんだよ」
しかし、その壁面にはどこを探っても、隠し扉が設けてあるような手掛りはなかった。そこでやむなく、その一部を破壊することになった。熊城は最初音響を確かめてから、それらしい部分に手斧《ておの》を振って、羽目《パネル》に叩きつけると、はたしてそこからは、無数の絃が鳴り騒ぐような音が起った。そして、木片が砕け飛び、その一枚を手斧とともに引くと、羽目《パネル》の蔭からは冷えびえとした空気が流れ出てくる――そこは、二つの壁面に挾まれた空洞だった。その瞬間、悪鬼の秘密な通路が闇の中から掴み取られそうな気がして、三人の唾《つば》を嚥《の》む音が合したように聴えた。打ち下す音とともに、梯状琴《クラヴィ・チェンバロ》の絃の音が、狂った鳥のような凄惨な響を交える。それは、周囲の羽目《パネル》を、熊城が破壊しはじめたからだった。ところが、やがてその一劃から埃まみれになって抜け出してくると、彼は激しい呼吸の中途で大きな溜息を吐き、法水に一冊の書物を手渡した。そして、グッタリとした弱々しい声で云った。
「何もない――隠し扉《ドア》も秘密階段も揚蓋《あげぶた》もないんだ。たったこの一冊だけが収穫だったのだよ。ああ、こんなものが、十二宮秘密記法の解答だなんて」
法水も、この衝撃からすぐに恢復することは困難だった。明らかにそれは、二重に重錘《おもし》の加わった、失望を意味するのだから。では、何故かと云うに、ディグスビイが設計者だったということから、ほとんど疑う余地のなかった秘密通路の発見に、まずまんまと失敗してしまった――それは、無論云うまでもないことである。けれども、それと同時に、事件の当初ダンネベルグ夫人が自筆で示したところの、人形の犯行という仮定を、わずかそれ一筋で繋ぎ止めていた顫音《せんおん》の所在が明白になった。それなので、いよいよ明瞭《はっきり》とここで、あのプロヴィンシヤ人の物々しい鬼影を認めなければならなくなってしまったのだ。しかし、以前の室《へや》に戻ってその一冊を開くと、法水は慄然《りつぜん》としたように身を竦《すく》めた。けれども、その眼には、まざまざと驚嘆の色が現われた。
「あ
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