J《いた》わるように抱きかかえて、あたかも秘密の深さを知らぬ者を嘲笑するような眼差を、法水に向けた。
「勿論|儂《わし》は、その疑題《クエスチョネーア》に対する解答が、神意審問会のあの出来事となって現われたと信じておるのです。いや、元来|心霊主義《スピリチュアリズム》には縁遠い方でしてな。そう云った神秘玄怪な暗合というものにも、必ずや教程公式があるに相違ない――と。いいですかな法水さん、貴方が探し求めておられる|薔薇の騎士《ローゼン・カヴァリエル》は、その二回にわたる不思議とも、異様に符合しておるのですぞ。それは云うまでもない、津多子さんにほかならんのです」
 その間法水は、黙然と床を瞶《みつ》めていたが、まるで、ある出来事の可能性を予期してかのような、弱々しい嘆息を洩らした。そして、「とにかく、今後貴方の身辺には、特に厳重な護衛をおつけしましょう。それから、また貴方に、『|秋の心《ヘルプスト・ゲフュール》』をお訊ねしたことを、改めてお詫びしておきます」と再び、他《はた》ではとうてい解しきれぬような奇言を吐いてから、彼は問題を事務的な方面に転じた。
「ところで、今日の出来事当時は、どこにお出かけになりましたか」
「ハイ、私は自分の室《へや》で、ジョオコンダ([#ここから割り注]聖バーナード犬の名[#ここで割り注終わり])の掃除をいたしておりました」とセレナ夫人は躊《ひる》まずに答えてから、レヴェズの方を向いて「それに、確かオットカールさん([#ここから割り注]レヴェズの名[#ここで割り注終わり])は、驚駭噴泉《ウォーター・サープライズ》の側にいらっしゃいましたわね」
 その時レヴェズ氏の顔には、ただならぬ狼狽《ろうばい》の影が差したけれども、「いやガリバルダさん、鏃《やじり》と矢筈《やはず》を反対にしたら、たぶん、弩の絃《いと》が切れてしまうでしょうからな」といかにも上ずった、不自然な笑声で紛らせてしまったのである。そうして二人は、なおも煩々《くどくど》しく、津多子の行動について苛酷な批判を述べてから、室を出て行った。二人の姿が扉《ドア》の向うに消えると、それと入れ違いに、旗太郎以下四人の不在証明《アリバイ》が私服によってもたらされた。それによると、旗太郎と久我鎮子は図書室に、すでに恢復していた押鐘津多子は、当時階下の広間《サロン》にいたことが証明されたけれど、不思
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