せんけりゃならんよ」
その最終の到達点というのが、黙示図の知られてない半葉を意味していると云うことも……また、その一点に集注されてゆく網流の一つでもと、いかに彼が心中|喘《あえ》ぎ苛立《いらだ》って捜し求めているか、十分想像に難くないのであった。しかし、扉《ドア》を開くと、そこには人影はなかったけれど、法水は眼の眩《くら》むような感覚に打たれた。四方の壁面は、ゴンダルド風の羽目《パネル》で区切られていて、壁面の上層には囲繞《いにょう》式の採光層《クリアストーリー》が作られ、そこに並んでいる、イオニア式の女像柱《カリアテイデ》が、天井の迫持《せりもち》を頭上で支えている。そして、採光層《クリアストーリー》から入る光線は、「ダナエの金雨受胎」を黙示録の二十四人長老で囲んでいる天井画に、なんとも云えぬ神々しい生動を与えているのだった。なお床に、チュイルレー式の組字をつけた書室家具が置かれてあるところと云い、また全体の基調色として、乳白大理石と焦褐色《ヴァンダイクブラウン》の対比を択んだところと云い、そのすべてが、とうてい日本においては片影すら望むことの出来ない、十八世紀維納《クムメルスブリュケル》風の書室造りだったのである。その空《がら》んとした図書室を横切って、突当りの明りが差している扉を開くと、そこは、好事家《こうずか》に垂涎《すいぜん》の思いをさせている、降矢木の書庫になっていた。二十層あまりに区切られている、書架の奥に事務机があって、そこには、久我鎮子の皮肉な舌が待ち構えていた。
「オヤ、この室にお出でになるようじゃ、たいした事もなかったと見えますね」
「事実そのとおりなんです。あれ以後人形が出ない代りに、死霊《おばけ》は連続的に出没していますよ」と法水は先を打たれて、苦笑した。
「そうでしょう。先刻《さっき》はまた妙な倍音が聴えましたわ。でも、まさか伸子さんを犯人になさりゃしないでしょうね」
「ああ、あの倍音を御存じでしたか」と法水は瞼を微かに戦《おのの》かせたが、かえって探るような眼差で相手を見て、
「しかし、この事件全体の構成だけは判りましたよ。それが、貴女《あなた》の云われたミンコフスキーの四次元世界なんです」といっこう動じた色も見せず、続いて本題を切り出した。
「ところで、その過去圏を調べにまいったのですが、たしか、鎮魂楽《レキエム》の原譜はあるでしょ
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