育を受けた、学校だけはお話しましょう。
 それは、印度《インド》の北西部カシュミールの首都、スリナガールにあるブリスコー氏の学校というのです。ここには、印度教徒も回教徒もキリスト教徒も、すべてこの地方の上流の子弟があつまるのです。
 聴いて御覧なさい。Tyndal−Briscoe's School《ティンダル・ブリスコーズ・スクール》 といえば、たいていのものは知っています。
 で、そこの、教程を終えてから何をしたかというと、まず助教師、そして最近は、校主の知己のヘミングウェー嬢が、本土から来られたについて案内役となりました。
 その、ミス・ロバータ・ヘミングウェーは、財団の有力者である国璽尚書《こくじしょうしょ》の令嬢です。まだ二十二か三くらいでしょう。匂いはないかわりに、清純な線があります。
 ところが、方々見歩いてこの町に来たとき、偶然ガンディの示威運動が起ったのでした。町は、兵士の発砲以来、廃墟のようになりました。雨が降る、汗が蒸し暑さに腐るように匂う――、事の起りはそういう晩だったのです。
 そうそう、宿は「|神主」館《ラジュラーナ》でしたよ。そして僕は、そのときヘミングウェ
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