っぷり。
鰒は、食べては魔味に類するけれど、釣りに邪魔物である。あの、鋭い一枚歯で太い天狗素《てぐす》など手もなく噛み切ってしまう。それでも、時々は釣れる。私は、たびたび房州鋸山の下の竹岡沖へ鯛釣りにでかけるが、そのとき一貫五、六百匁もある大きな名古屋鰒を釣りあげると、船頭が「こいつ奴《め》っ」と掛け声をかけながら、出刃庖丁の峯で彼の頭を叩くと、鰒は※[#「目+険のつくり」、第4水準2−82−3]をぱちぱちさせて、まばたきをする。
怖いようでもあるわい。
底本:「『たぬき汁』以後」つり人ノベルズ、つり人社
1993(平成5)年8月20日第1刷発行
入力:門田裕志
校正:松永正敏
2006年12月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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