釣った魚の味
佐藤垢石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)卸《おろ》して
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釣りは、主人が釣りそのものを楽しむということと共に、獲物の味を家族に満喫させるところに一層の興味がある。
ところが、獲物を釣り場に棄ててきたり、無意味に人に呉れたりする釣り人を見受けるのは甚だ心得ない。
つまり、これは主婦が獲物を喜ばない影響であるかも知れないのである。世の中には魚屋が持ってくる魚であれば、それが活きの悪いものであっても喜んで食べるのに、主人が釣ってきた魚であると、生臭いとか気味が悪いといって手をつけない主婦が往々ある。それはまことに残念だ。
釣ってきた魚であれば、それが川魚であろうが海魚であろうが、これに越した活きのいい味の立派なご馳走はないのである。
主人は、よく主婦を指導して獲物の味を家庭に理解させねば、釣りの目的が達せられないであろうと思う。いまは寒鮒の季節である。鮒などといって馬鹿にはならぬ。肉の甘味は鯉に増しているのである。釣ってきた鮒は決して粗末にすべきではない。焼いて甘露煮にするのは、手数もかかるし、その夜のご馳走にもならぬから、洗い
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