想い出
佐藤垢石

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)黒鯛《くろだい》釣り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四、五日|間《ま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)道了大|薩※[#「土へん+垂」、第3水準1−15−51]
−−

 十五、六歳になってからは、しばらく釣りから遠ざかった。学校の方が忙しかったからである。
 二十歳前後になって、またはじめた。
 母と共に、二年続けて夏を相州小田原在、松林のこんもりとした酒匂村の海岸に過ごしたことがある。炎天を、毎日海辺の川尻の黒鯛《くろだい》釣りやはや[#「はや」に傍点]釣りに専念して、第一年の夏は終わったのであったが、第二年は六月のはじめから鮎釣りをやってみた。
 五月下旬のある日、ふと東海道の木橋の上手《かみて》にある沈床の岸に立って瀬脇をながめると、遡りに向かった若鮎が盛んに水面に跳ねあがるのを発見した。
『この川にも、鮎がたくさんいるのだな』
 と、昔の友に会ったように感じた。
 子
次へ
全9ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング