ど次第に棚が高くなって、百尋以上になると底から、上方二十尋に及ぶことがある。しかし大鯛は、大体において底に近いところ、四、五尋から十尋以内に遊泳しているのを普通とする。餌の移動によって上下左右広い棚に活動することは、前項に述べた通りだ。冬期は底近くを好み、温かくなると次第に浮いてくるが、夜も棚が高いのである。
大鯛を狙うには、大体テンヤ釣りの仕掛けを用いる。この釣りは普通三十尋前後から以上深い海で行なわれ、深くなるほどタチが分からないで初心者は困難するが、指導者の言葉をよく噛み研究心を積んでいけば次第にタチをとることを心得るものである。タチが自由にとれるようになれば、これほど面白い釣りは他に珍しい。大鯛釣りは錘が海底につくと、まず最初に二尋乃至三尋たぐりあげる。そしてさらに静かに一尋くらい、ついで一尋、二尋と、次第々々に海タチの二割くらいと思うだけ道糸をたぐりあげて鯛の棚を探ってみるのが、賢明の方法である。
鯛の当たりには、随分複雑な変化がある。いきなり、餌をくわえて駆けだすのがあるかと思えば、ゴリゴリと餌を噛んでいる響きが指先へ感じてくる場合もある。しかし、一体に当たりは微妙であ
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