あろう。
 釣り餌に用いるのは普通赤蝦、車蝦、芝蝦、白蝦、藻蝦、赤蛸、飯蛸、大蛸の足、蝦蛄《しゃこ》、幽霊蝦蛄、活烏賊、イカナゴ、擬餌、芋、味噌団子、烏賊の腸、赤虫、秋の魚のブツ切りなどであるが、鯛は自然に生活しているこのほかに榮螺《さざえ》、宿借《やどかり》、蛤、浅利《あさり》、蟹、牡蠣《かき》、ウニ、ユウ、磯巾着、海藻、人手《ひとで》など、そのほか、なにを食べているか分からない。随分硬い歯、殊に大食の魚であるのだから、我々が想像もつかぬものを食っているに違いない。
 餌は、釣りの役割のうち最も重要な位置を占めているのである。鯛は以上あげたような種類のものを食っているのであるから、釣り人各自が研究工夫して新規な眼新しい餌を発見して用いたならば、必ず興味ある会心の釣りがやれることと思う。

 鯛釣りを志す人のために、その一般について、簡単ながら心得ともいうべきことを述べてみよう。
 四季いずれの時も、鯛を釣るにはその棚《たな》つまり魚の遊泳層を心得ておかねばならない。小鯛は、普通底から半|尋《ぴろ》乃至一尋くらいが棚である。中鯛は、海底から三尋から八尋くらいのところであるが、深くなるほ
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