は、どこを標準にしてきめたものでしょうね」
「そりゃ、わし共にも分かりゃしねえがの」
「飛んでもねえ、納得なんか爪の垢ほどもいっていねえよ」
「それじゃ、組合の値段が安過ぎるというのかね」
「馬鹿馬鹿しくって、話にならねえ」
「でも皆さんが、精々青物組合へ出すようじゃありませんか」
「えへ、へへえ」、甚だ意味ありげに笑うのだ。
「大きな声じゃ言えねえがね、ほんとうは組合から買いにきても、いい顔はしねえだよ。もう畑は、空っぽだよ、ちうわけなんだ」
「なるほど」
「町の人にや気の毒だがの、やむを得ねえ、ちうわけだんべ」
「そうだね、都会の人には気の毒だね。ところで、それならあれほどあっちこっちの畑に葱や菜っ葉が山ほどあるのに一体どこへ売るということになるのだろう」
「そこを、きいて貰っちゃ困る」
「でも、農家で、食った余りを組合へ出さなければ、野菜は畑で腐ってしまうじゃないか」
「そこは、けっこう腐られねえよ」
「そうかねえ」
この問答では、大して要領を得ぬ。
私は十数年前、この上新田で野菜を作っていたことがある。村に青物市場があって、前橋から八百屋が買い出しにきた。ある朝、茄子の食い
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