のものにはそれがない。これを関西系の山女魚、関東系の山女魚と称している。
笹子の連山を分水嶺として、西側甲府方面へ向かって流れ出し笛吹川へ注ぐ渓流は日川、東側へ流れ出で、桂川へ合するのを笹子川と言っているが、日川にいる山女魚は関西系であって、笹子川にいるのは関東系である。僅かに一つの分水嶺を境にして、種の分布が違うのは、まことに面白い現象であると思う。また、箱根の二子山に源を持ち湯本に落ちて早川に合し、相模湾へ注ぐ須雲川の山女魚は関東系であるのに対し、丹那トンネルを越えて第一の駅、函南村を流れ出して駿河湾へ注ぐ柿沢川の山女魚は関西系である。同じ信州でも浅間火山を取りまく諸渓流には関東系の山女魚が棲み、犀川の上流日本アルプスから流れ出す奈良井川や高瀬川に産する山女魚は関西系に属し、江州琵琶湖に棲む※[#「魚+完」、第4水準2−93−48](アメノウオ)と同じであるのは面白い。
諸国を釣りして歩き、こんなところにまで心をとめれば、釣技にもまた特別な興趣が伴うものである。
敏捷であって人に怯《おび》える習性を持っている。餌に向かって猛然と突進してくるが、その餌を口にして鈎のような詭計《
前へ
次へ
全21ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング