。止めろよ、うぬ惚れは――張華といえば、晋の国現代における大学者の最右翼であるのは、知らぬものはあるまい。と、ご神木がいうと、狸はご神木の言葉を抑えて、
張華が、なんだい。大家などといって、ひどく大面《おおづら》しているというから、これからわが輩が行って、一番へこましてやろうというんだよ。
それがいけないというのだ。一体、貴公は日ごろ、自分を買い被っている。
よせやい、乃公《だいこう》を甘くみるなよ、細工は流々仕上げをご覧だ。
困ったもんだね――おのれを知らんちうのは。
乃公は、貴公とは違うんだよ。貴公のように、地べたへ生えたなり、上へばかり伸び上がって、風を喰うのがしょうばいで、なにも知らない世間見ずと一緒にされてたまるかい。
おいおい、無理するなよ。無理をすると、貴公の生命が危ないばかりじゃない、そのあおりを食って、わが輩の命に影響するかも知れないからね。折角思い立ったのだろうが、まあ今日のところは思いとどまって、これから二人で一盃やろうじゃないか。どうだい、そのほうが賢明だぜ。
いらぬおせっかいだよ。貴公などと喋っていれば遅くなる。狸は、ご神木が誠心こめて止めるのを
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