徊していたが翅に力をいれて、宙に飛び立ったのである。諸君、いよいよ蜂が飛び立った。蜂がくわえた肉に、真綿の白い玉がついているのを見ただろう。あれを目標に蜂の飛び行く跡を追いかけるのだ。蜂は、真綿と共に巣の入口まで行くから、そこで蜂の巣発見という目的に達する訳だ。それ諸君、真綿の飛び行く先を見失うな、それそれ。斜酣の眼の色は、変わってきた。
けれど、この場所は樹の枝が錯綜しているのと、少し風があるので真綿をくわえては蜂はうまく飛べない。直ぐ木の枝に引っ掛かってしまう。引っ掛かると蜂は、その肉を諦めて棒の先にある大きな蛇の肉のところへ帰ってくる。斜酣は数回真綿の目標を噛ませて親蜂を飛ばせたけれど巣は甚だ近いと思うがこの樹と風では、理想通りに飛んでくれない。残念だけれど、新規の場所へ移転する、という命令を出したのである。
私らは、片手に棒にさした蛇の肉、片手に弁当をさげて、何とか学校敷地の高い塀を再び乗り越して外へ出た。
四
野道へ出た。そこは少し小高くなっていて、前の方に大根畑が展開している。三町ばかり遠くに紅葉の平林があって、その横に芒野が続いている。
ここは、障害
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