4水準2−87−49]と次々に運ばれ、続いて髪菜、広肚、紅焼、魚翅、※[#「火+畏」、第3水準1−87−57]五などが卓上に現われる。それが、一巡してから大皿に盛り出されたのが、「香熊」と銘うつ待ちに待った羆である。
われわれは、献立表に書いてある「香熊」というのを、実は熊掌料理であるまいかと期待していたのだ。熊掌料理は支那の料理書によると豹胎、鯉尾、龍肝、鳳髓鶚炙、酥酪蝉、狸唇の七種を加えて周の八珍と称しているが、その料理法について木下謙次郎は、まず熊掌を温水でよく洗い、次に熱湯で湯がいて表皮を剥ぎ、これを流水にさらすこと三昼夜。かくして磁器のうちに入れ、酒を醋に和して昼夜間断なく蒸熱すること、少なくとも五昼夜に及ぶ。そこで臭気が全然去り、かつやわらかになったならば骨を抜きとり肉を薄くきり、鶏汁、酒、酢、薑《はじかみ》、蒜《にんにく》などを加え、数時間煮燗して最後に塩と醤油で味をつける。以上の次第であるけれども、熊掌料理を仕上げるには少なくとも十日間位を要し、その味は脂肪の固まりに似て旨味ありて、口ざわりよく、かつ軽い苦《にが》み味を持っていると、説いているのである。
「香熊」を一
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