う。まあ、永井柳太郎級の大臣にはなれると思う。それよりも大きな人柄の大臣になりたいと思ったら、も少し人生勉強をしてくれ。
木暮の話でひどく長くなったが、あれは私の後輩なのであるから堪忍してください。私は釣りが好きであるから、議場が釣り堀のように見えるのだ。釣り堀の底に、妙な魚がうようよ泳いでいる。町田忠治は、政権という餌を捜しているめごち[#「めごち」に傍点]みたいだ。永井柳太郎はのっぺらとして舌平目[#「舌平目」に傍点]の感じがある。桜内幸雄は、鮟鱇《あんこう》といったところだろう。桜内の胆が、鮟鱇の胆のようにおいしくたべられるのはいつだろう。
秋田清は、ごんずい[#「ごんずい」に傍点]だ。中島知久平は、墨烏賊《すみいか》だ。小磯国昭はべん[#「べん」に傍点]鯛だ。小磯は果たして将来大鯛にまで育ってゆき、魚類の王さまになるかどうか。
議会の魚類はどれもこれも、物足りなさそうな顔をしている。でも、武士は食わねど高楊枝《たかようじ》というあんばいで、支那と戦っているのは、餌が欲しくてやっているのじゃない、と頑張っているのだ。
私も、腹がへってきた。時計を見るともう六時近い。まだ、
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