なければやれないところだ。
 最後に農業資材確保のことで藤原銀次郎をでかい声でおどかした。おどかされると藤原はひょこひょこと演壇へ出てきて、ぺこりとお辞儀をした。これが、きょうの第一等の余興であった。高田は、一種の風格を持っていて面白い。
 高田に答えたのが、島田俊雄だ。この人間の態度と答弁が、最も要領を得ていると思った。百戦錬磨の功がある。米価は今後決して引き上げないと、きっぱりいってのけた。ほかの大臣は、何事も口の先でごにゃごにゃと国民に分からせないようにいっているけれど、島田は国民の気持ちのあるところを、しっかり掴んでいる。日本人は曖昧なことがきらいなのだ。右とか左とか、はっきりいって貰えば、それであきらめる民族だ。

     下

 勝正憲は、まだ官僚臭が抜けきらない。電力問題で誰かの質問に答えて、軽々に諸君が考えているような簡単な問題じゃない、などと口を滑らして、尻っ尾をつかまえられた。
 勝の眼から見れば、議員どもが人民どもに見えるのは当たり前だ。傍聴席から見ても、議員どもは人民に見えるから。
 それから木暮武太夫が経済問題をしゃべりだした。前橋中学で、木暮は私の後輩であ
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