季節の味
佐藤垢石

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鰔《はや》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)若|茄子《なす》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+区」、第4水準2−88−54]歌
−−

 物の味は季節によって違う。時至れば佳味となり、時去れば劣味となる。魚も獣も同じである。七、八両月に釣った鰔《はや》は、肉落ち脂去って何としても食味とはならない。十二月過ぎてからとった鹿は、肉に甘味を失って珍重できないのである。
 日本人の食品材料は、およそ四百種あるそうである。それに、病的といおうか悪食といおうか、いも虫、ヒル、みみずの類を生のまま食う者があるが。これらを加えたならば驚くべき数に達するであろう。その一つ一つの、食味の季節を調べてみたならば余程面白いことに違いない。
 味の季節を知る者がいわゆる食通であって、料理の真髄を語り、弄庖《ろうほう》の快を説く者は必ず物の性質をきわめておかねばならない。そうであるとするならば
次へ
全8ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング