れると素晴らしくおいしくなる。伊予のかまぼこには、この肉が大分入っていて人から珍重され、これも河豚嫌いの犬養木堂が、それとは知らずいつも伊予からかまぼこを取り寄せて食っていたところ、そのかまぼこのおいしい理由を説いて聞かされ、急にかまぼこがきらいになったという話がある。
姫柚子《ひめゆず》の汁で、チリを食うとおいしい。刺身の醤油にもこれを入れれば、一層快味を増す。紅葉おろし、さらし葱、わけぎの薬味。それから加役として豆腐、茄子、新菊など。もう、冷涼の秋がきた。ちり鍋、すき焼き鍋、雑炊鍋。思い出しただけで、舌端に魔味迫り来たるを覚える。
きょう、上総の国、竹岡の漁師から肥った河豚が釣れはじまったという報せがあった。
[#地付き](一四・一〇・六)
底本:「完本 たぬき汁」つり人ノベルズ、つり人社
1993(平成5)年2月10日第1刷発行
底本の親本:「随筆たぬき汁」白鴎社
1953(昭和28)年10月発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月2日作成
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