海豚と河豚
佐藤垢石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大抵《たいてい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百二十五|哩《マイル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]
−−

     一

 鯨と名のつくものなら、大抵《たいてい》は食べたことがある。『大井川のくじらは、婦人にしてその味を知るなり』と、言うことからそれは別として山鯨、なめくじら、海豚《いるか》に至るまで、その漿《しょう》を舌端に載せてみた。
 ところで、山鯨のすき焼き、なめくじらの照り焼きなどは大そうおいしいけれど、海豚の肉はどうも感服しかねる。晒し鯨の酢味噌にしたところが、肉そのものには何の味もなく、ただその歯切れのよさを貴ぶだけで、酢味噌の出来が旨《うま》くなかったら、食べられるものではない。
 缶詰に至っては、沙汰の限りだ。てんで、口中へはいるものではないのである。君は鯨取りの元締だから、何とか鯨をおいしく食わせる法を講
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