どうだの」
と、誘ひかけた。
「…………」
大河童はなんとも答へないで、仲間の方へ向き返り打ち合せをはじめた。ややしばらくしてから俺の方へ向き直り、
「それぢや一杯御馳走になるちうことにするかな」
と、吐《ぬ》かす。
当方は、しめたと思つた。そして、彼等が泥酔したら一匹生捕つてやらうと考へた。
五六匹の河童共は、厩の前へ車座となつた。納屋から俺が焼酎の一斗瓶と、五郎八茶碗数個を運んできた。河童といふ動物は、実に豪酒だ。生きた小馬を肴に眺めながら、強い焼酎を五郎八茶碗で、がぶがぶやる。
そこへ猫万どんも厩舎のかげの闇がりから這ひ出してきて、河童の車座に向つて無言で恭々しく頭を下げた。
次第に夜は、明け方に近づいて行く。
いかに豪酒の河童共と雖も、僅かに数匹で一斗瓶底近くまで呑みほしては、酩酊せざるを得まい。
俺も車座の仲間に入つて、少しはのんだ。
俺は彼等が正体なく酔つ払つた頃あひを見はからつてから突然、
「夜が明けたあッ!」
と、大きな声でどなつた。
彼等のうちどれか一匹が、腰を抜かして動けなくなつて逃げ後れたら荒縄でふんじばつてやらうと考へてゐたからだ。
「キ
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