おうか』
と言った。乗気になってきたらしい。
『やってみよう――だがね、縁談は水物というから――』
『頼む』
五
こう私は引き受けたけれど、その後俗事が忙しかったので、房州へ出向くことができないから手紙で往復して写真交換というところまで漕ぎつけた。もちろん、私はさきに房州から持って帰った妹の写真を、山岡に見せたところ――よろしい、可もなし不可もなし。というところだろう――という世間並みの気持ちを山岡から聞いているのだから、もうここに至っては、こちらから山岡の写真を送ってやるだけでよろしいのだ。
山岡の写真ができた。見ると、なかなか立派にできている。半身像であるから、上背のところは分からない。モーニングを着て、反《そ》り返っているところ、眼鏡をかけた肥った顔など、まことに鷹揚に写っている。
――これなら、大丈夫だ――
と、私は感心した。写真屋というものは、商売とはいいながらうまいものだと感服した。
房州へ送った山岡の写真は、兄から東京の妹へ送られ、妹からさらに折り返して兄に意見が申し送られたのだろう。私に対する森山さんの挨拶には、
――大分立派な御方《おかた》
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