とになっていると放送した。
蚯蚓が下熱剤として特効のあるのは、この山口という医学博士が発見したわけではない。往年、理学博士の三宅恒方が「天使の翅」と題する書物を著わしてそのなかに研究の結果、蚯蚓は下熱剤として効があることを発見したと書いてあり、なおわが国ではあちこちで昔から下熱剤として蚯蚓を煎じてのむ習慣がある。
また支那の医書に蚯蚓は諸熱を解し、小便を利し、足疾を治すと書いてあるが、私の故郷上州では、蚯蚓に小便をかけると、オチンコが腫れるという言い伝えがある。また寝小便の薬であるとも言い伝えている。本草綱目では蚯蚓を歌女と命名した。
日本でも支那でも、蚯蚓の腹のなかから泥土を絞りだして、これを酒に入れて飲む習慣がある。これを飲めば、声をよくするからであるといわれているが、私は声をよくする必要がないから未だ蚯蚓酒を飲んだことがなく、従ってどんな味であるか分からない。
本草綱目に、蚯蚓は一名歌女といい、地中に長吟して鳴くとあるところから、これを飲めば音声をよくするという口碑によって、ミミズ酒という奇想が生まれたのであろう。しかし、近ごろの研究によれば、蚯蚓の体中には発音器がないか
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